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集印帖の卸売りカタログ

集印帖の卸売りカタログ

集印帖は、いつごろから、どんな形で売られていたのだろうか。
国立国会図書館の「国立国会図書館デジタルコレクション」を検索したところ、大正末期に出版された本から、集印帖の卸売りカタログを2つみつけることができたので、以下に紹介する。

 絵画絵葉書類品附属品美術印刷製品仕入大観

『絵画絵葉書類品附属品美術印刷製品仕入大観』(※1)は、大正14(1925)年10月に大日本絵葉書月報社から出版されたもので、当時流行していた絵葉書やブロマイドなどを扱う業者向けのカタログである。 この本のp.129-146に、栗本本店のことが掲載されている。

まず最初に、栗本本店が発行する『栗本タイムス』の紹介があり、「同店の沿革と店主の略歴」、「過去に於ける同店の出版物」と続く。そして「栗本本店地方代理部」が扱っているものとして、

(イ) 絵葉書と枝折カード類
(ロ) レターペーパーと美封筒
(ハ) 額画と絵葉書額
(ニ) トランプと骨牌類
(ホ) 類品と付属品

の5つがあげられている。このうち、p.133「(ホ) 類品と付属品」の中に「神社佛閣參拜記念蒐印帖」と書かれていて、栗本本店が集印帖の卸売りをしていたことがわかる。ここでは「印帖」と書かれているが、以下で見るようにこれは「集印帖」と同一で、この書き方は栗本本店の特徴である。

次に、p.135から「栗本本店発売品目録」が掲載されているが、p.139-140に「神社佛閣參拜記念蒐印帖」のカタログが掲載されている。これをみると、表紙に貼る布の種類によって価格が異なっている。「古代更紗」は、木綿の模様染めだろう。「シケ絹」は「絹シケ」とも言い、表装用の絹織物。「ドンス」は「緞子」で、光沢のある高級な絹織物。値段が高くなるにつれて、高級な布になっていくのがわかる。さらに、大きさは大・中・小の3種類があり、高級なものには2帖帙入りのセットもある。

神社佛閣參拜記念蒐印帖(※2)
注文番号仕立表紙摘要各1冊卸正味
1号古代更紗表紙箱入小形38銭
2号古代更紗表紙箱入中形54銭
3号古代更紗表紙箱入大形66銭
4号シケ絹表紙箱入小形40銭
5号シケ絹表紙箱入中形56銭
6号シケ絹表紙箱入大形68銭
7号ドンス表紙箱入小形42銭
8号ドンス表紙箱入中形60銭
9号ドンス表紙箱入大形72銭
10号シケ絹表紙 中形2冊帙入1円38銭
11号シケ絹表紙 大形2冊帙入1円68銭
12号ドンス表紙 中形2冊帙入1円45銭
13号ドンス表紙 大形2冊帙入1円75銭

このようにたくさんの種類の集印帖がカタログに掲載されていることから、このカタログが出た大正14(1925)年よりもかなり前から集印帖の卸売りをしていたと推測される。

 栗本タイムス 23号

『栗本タイムス 23号』(※3)は、栗本本店が発行している小売店向けのカタログで、23号は大正15(1926)年10月の発行である。
このカタログには、レコードや絵葉書、ブロマイド、かるたなど、さまざまなものが掲載されているが、p.34に「神社佛閣蒐印帖」のカタログが写真入りで掲載されている。内容は、先に紹介した『絵画絵葉書類品附属品美術印刷製品仕入大観』のカタログとは異なり、大きさ別にまとめられていて、その中は表紙の布の質と、上製・並製と細かく分かれている。また、小形の2帖帙入りが追加されるなど、種類がふえているのがわかる。

神社佛閣蒐印帖(※4)
注文番号仕立表紙上製並製
小形(3寸×4寸)
 1号更紗表紙上製 30銭並製 23銭
 2号シケ表紙上製 32銭並製 23銭
 3号ドンス表紙上製 34銭並製 24銭
中形(3寸7分×5寸2分)
 4号更紗表紙上製 46銭並製 35銭
 5号シケ表紙上製 48銭並製 37銭
 6号ドンス表紙上製 49銭並製 38銭
大形(4寸×5寸7分)
 7号更紗表紙上製 52銭
 8号シケ表紙上製 53銭
 9号ドンス表紙上製 56銭
小形2冊帙入(3寸×4寸)
 10号シケ表紙上製 92銭
 11号ドンス表紙上製 92銭
中形2冊帙入(3寸7分×5寸2分)
 12号シケ表紙上製 1円26銭
 13号ドンス表紙上製 1円30銭
大形2冊帙入(4寸×5寸7分)
 14号シケ表紙上製 1円40銭
 15号ドンス表紙上製 1円47銭

大きさは次の3種類で、このカタログには寸法も書かれている。このうち中形の集印帖は、現在でもよくみかけるサイズである。

  • 小形 3寸×4寸(9.1×12.1cm)→だいたいB7判、大形の半分のサイズ
  • 中形 3寸7分×5寸2分(11.2×15.8cm)→だいたいA6判、文庫本サイズ
  • 大形 4寸×5寸7分(12.1×17.3cm)→だいたいB6判、単行本サイズ

価格は1年前のカタログより安くなっているが、売れ行き好調でコストダウンして値下げしたのか、あるいは競争相手が増えて値下げせざるを得なかったのか、そのあたりは不明である。

 現物との照合

このサイトの集印帖の中に、栗本本店の集印帖があるか調べてみたが、栗本本店と書かれたものは見当たらなかった。
しかし、栗本本店は卸売り業者で、自社の名前をつけて販売しなかった可能性もある。そうだとすると、「集印帖の呼び方(実例)」の中に「蒐印帖」と印刷されたものがいくつかあるので、これらのどれかが栗本本店のものなのかもしれない。
特に、表紙に横書きの「蒐印帖 第一輯」という題箋を貼った集印帖No.39は、大きさが182mm×137mmと大きく、表紙に模様が入った緞子を使っていること、帙に入っていること、押された御朱印の年代が大正12年から昭和5年であることから、『絵画絵葉書類品附属品美術印刷製品仕入大観』のカタログの、注文番号9号という可能性がある。
また、帙に集印帖No.39と似たような横書きの「蒐印帖」という題箋を貼った、集印帖No.121集印帖No.266-267も、栗本本店のものかもしれない。
集印帖No.121は、大きさが153mm×108mm、表紙は模様が入った緞子で、御朱印の年代は昭和3年から9年、表側26ページ帙の裏側に「品質最上之印」というシールが貼られていることから、『栗本タイムス 23号』のカタログの、中形6号の上製かもしれない。
集印帖No.266-267は未使用だが、大きさは中形で表紙は緞子、さらに2冊帙入りという特徴から、同じカタログの13号の可能性がある。
なお、13号の卸売り価格は1円30銭だが、集印帖No.267裏側1ページには、大丸の1円30銭の値札が貼られている。卸売り価格と値札の価格が同じでは利益が出ないことになるが、この場合、百貨店向けの卸売り価格はカタログ価格より安かったとか、このカタログと値札シールは年代が違うといったことが考えられる。

※1
 絵画絵葉書類品附属品美術印刷製品仕入大観. 大日本絵葉書月報社, 1925.10
※2
 『絵画絵葉書類品附属品美術印刷製品仕入大観』のp.139-140による
※3
 栗本タイムス 23号. 栗本本店, 1926.10
※4
 『栗本タイムス 23号』のp.34による


2014年12月1日作成 [集印帖全般]

最終更新時間:2019年09月14日 23時31分59秒